常務サマ。この恋、業務違反です
人事部長のあの言い方。
間違いない。
あの封筒の中身はきっと私に関する調査報告書で、今まさに航平の手に渡ろうとしている。
ダメ、と、咄嗟に思った。
このまま航平の手に届けさせる訳にはいかない。
何が書かれてるかなんてわからない。
だけどどうせ知られてしまうのなら、私が自分の口で航平に話したい。
驚きも怒りも悲しみも、予想できる感情の全部を、私が真っ直ぐ航平から受け止めたい。
「人事部長、待って下さい!」
思い切って呼び止めると、数歩先から人事部長が振り返った。
突然の私の大声に驚いて、次の瞬間には眉間の皺を深める。
「なんですか。騒々しい人ですね」
「報告書は私がお預かりします。高遠さん宛の手紙や書類を開封して中を改めるのは、私の仕事ですから」
緊張で額に薄く汗が滲むのを感じた。
心の動揺を必死に隠して人事部長の前に立つと、私は静かに手の平を上向けて差し出した。
「あいにく、これは私が部長から直々に依頼された調査です。親展扱いですので、あなたが開封出来るものではない」
「それでも私がお預かりします」
背筋を伸ばして虚勢を張りながら、有無を言わせない口調で繰り返した。
人事部長は不快そうに目を細めて私を見やった後、苛立ち混じりの息を吐いてから、抱えていた封筒を乱暴に私に押し付けた。
「そこまで言うのなら、お渡ししましょう。必ず部長に直接手渡して下さい」
「お預かりします」
私の手に渡った封筒は、それほど厚さも重みも感じられなかった。
表面には、確かに赤字で親展と表記してある。
人事部長は方向転換して、今来たばかりの廊下を戻って行く。
私はその背中を見送った後、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせると、航平の執務室に急いだ。
間違いない。
あの封筒の中身はきっと私に関する調査報告書で、今まさに航平の手に渡ろうとしている。
ダメ、と、咄嗟に思った。
このまま航平の手に届けさせる訳にはいかない。
何が書かれてるかなんてわからない。
だけどどうせ知られてしまうのなら、私が自分の口で航平に話したい。
驚きも怒りも悲しみも、予想できる感情の全部を、私が真っ直ぐ航平から受け止めたい。
「人事部長、待って下さい!」
思い切って呼び止めると、数歩先から人事部長が振り返った。
突然の私の大声に驚いて、次の瞬間には眉間の皺を深める。
「なんですか。騒々しい人ですね」
「報告書は私がお預かりします。高遠さん宛の手紙や書類を開封して中を改めるのは、私の仕事ですから」
緊張で額に薄く汗が滲むのを感じた。
心の動揺を必死に隠して人事部長の前に立つと、私は静かに手の平を上向けて差し出した。
「あいにく、これは私が部長から直々に依頼された調査です。親展扱いですので、あなたが開封出来るものではない」
「それでも私がお預かりします」
背筋を伸ばして虚勢を張りながら、有無を言わせない口調で繰り返した。
人事部長は不快そうに目を細めて私を見やった後、苛立ち混じりの息を吐いてから、抱えていた封筒を乱暴に私に押し付けた。
「そこまで言うのなら、お渡ししましょう。必ず部長に直接手渡して下さい」
「お預かりします」
私の手に渡った封筒は、それほど厚さも重みも感じられなかった。
表面には、確かに赤字で親展と表記してある。
人事部長は方向転換して、今来たばかりの廊下を戻って行く。
私はその背中を見送った後、大きく深呼吸して気持ちを落ち着かせると、航平の執務室に急いだ。