常務サマ。この恋、業務違反です
『親展』封書だから、と渡しても、航平はいつも私に開けさせる。
それに航平自身、これがどういう類の書類かわかっていて私の手に預けたままで出て行った。
大丈夫。航平はきっと、私を責めたりしない。
右手でペーパーナイフを取り上げた。
しっかり封がされた封筒に僅かにナイフの先を入れて、その瞬間、ピタリと私の手は止まった。
――ダメ。
心のどこかで、私が私を止める声が響く。
『お前さ、高遠さんに信頼されてる、って胸張って言えるか?』
加瀬君からのメールの文章が頭の中で明滅している。
ドキドキと心臓が騒ぎ出すのを自覚しながら、私は右手のナイフと左手の封筒を交互に見つめた。
「……胸なんか張れないけど」
そんな独り言が、口を突いた。
『話は後で聞くから』
航平が放った言葉がジワジワと私の胸に浸透して行く。
「……自信、持ちたいからっ……!」
自分に言い聞かせるように、強い声でそう言った。
右手のナイフを引き出しに戻して、私はゆっくり立ち上がる。
左手に封筒を持ったまま航平のデスクに近付いて、一瞬躊躇った後で、閉じられたノートパソコンの上に置いた。
その上に、走り書きしたメモを残す。
『二、三日、休暇を下さい』
荷物を纏めて、しっかりと肩から掛けて大股で執務室を横切る。
ドアに手を掛けてから、一度だけ大きく振り返った。
航平のデスクに置いた白い封筒が、やけに存在感を発しているように見える。
その白さを目に焼き付けて、私は執務室を飛び出した。
それに航平自身、これがどういう類の書類かわかっていて私の手に預けたままで出て行った。
大丈夫。航平はきっと、私を責めたりしない。
右手でペーパーナイフを取り上げた。
しっかり封がされた封筒に僅かにナイフの先を入れて、その瞬間、ピタリと私の手は止まった。
――ダメ。
心のどこかで、私が私を止める声が響く。
『お前さ、高遠さんに信頼されてる、って胸張って言えるか?』
加瀬君からのメールの文章が頭の中で明滅している。
ドキドキと心臓が騒ぎ出すのを自覚しながら、私は右手のナイフと左手の封筒を交互に見つめた。
「……胸なんか張れないけど」
そんな独り言が、口を突いた。
『話は後で聞くから』
航平が放った言葉がジワジワと私の胸に浸透して行く。
「……自信、持ちたいからっ……!」
自分に言い聞かせるように、強い声でそう言った。
右手のナイフを引き出しに戻して、私はゆっくり立ち上がる。
左手に封筒を持ったまま航平のデスクに近付いて、一瞬躊躇った後で、閉じられたノートパソコンの上に置いた。
その上に、走り書きしたメモを残す。
『二、三日、休暇を下さい』
荷物を纏めて、しっかりと肩から掛けて大股で執務室を横切る。
ドアに手を掛けてから、一度だけ大きく振り返った。
航平のデスクに置いた白い封筒が、やけに存在感を発しているように見える。
その白さを目に焼き付けて、私は執務室を飛び出した。