常務サマ。この恋、業務違反です
それでも部長は攻撃の手を緩めまいというように、テーブルに手を突いて私をねめつけた。
そして、ニヤニヤ笑ったままで、ゆっくりと妙に低めた声で私に告げた。
「葛城さん。君が一言頷けばそれでいいことじゃないのか? ……実際に『関係のあった』スタッフの証言があれば、ウェイカーズも反論出来ないだろうからな」
そんなことを平気で言う部長の口元を、私はただ呆然と見つめた。
「部長! それはっ……」
部長の『失言』に、さすがに加瀬君も反旗を上げる。私の代わりに加瀬君が食い付いてくれる。
そんな様子を現実感を伴わない視界で眺めながら、私はギュッと拳を握り締めた。
「……最低……」
無意識に、そんな言葉が口を突く。
聞き止めた加瀬君がハッとしたように私を振り返った。
それでも、私は目線をぼんやりと宙に彷徨わせながら、同じ言葉を繰り返した。
「なんなの……最低」
航平も、人事部長からは『部長』って呼ばれてる。
私が同じように『部長』と呼ぶ人間が、こんな屑みたいな人間だなんて。
ほんの一ヵ月前まではこの人の命令は絶対だって思ってた。
この人からの業務命令に従ってウェイカーズに潜入して、航平を騙した。
そして、今もなお、私は航平を陥れる為の道具にされる。
「……私、なんで……こんな人の部下なんだろう」
「葛城っ!」
独り言と聞き流すには大きな声を漏らす私を、加瀬君が険しい顔をして止める。
ハッと顔を上げると、青い顔をした加瀬君の向こうで、部長が加瀬君よりもっともっと険しい顔をして私を見ていた。
一瞬だけ、唇を噛んだ。
だけど、心にはもう迷う気持ちすら湧いて来なかった。
そして、ニヤニヤ笑ったままで、ゆっくりと妙に低めた声で私に告げた。
「葛城さん。君が一言頷けばそれでいいことじゃないのか? ……実際に『関係のあった』スタッフの証言があれば、ウェイカーズも反論出来ないだろうからな」
そんなことを平気で言う部長の口元を、私はただ呆然と見つめた。
「部長! それはっ……」
部長の『失言』に、さすがに加瀬君も反旗を上げる。私の代わりに加瀬君が食い付いてくれる。
そんな様子を現実感を伴わない視界で眺めながら、私はギュッと拳を握り締めた。
「……最低……」
無意識に、そんな言葉が口を突く。
聞き止めた加瀬君がハッとしたように私を振り返った。
それでも、私は目線をぼんやりと宙に彷徨わせながら、同じ言葉を繰り返した。
「なんなの……最低」
航平も、人事部長からは『部長』って呼ばれてる。
私が同じように『部長』と呼ぶ人間が、こんな屑みたいな人間だなんて。
ほんの一ヵ月前まではこの人の命令は絶対だって思ってた。
この人からの業務命令に従ってウェイカーズに潜入して、航平を騙した。
そして、今もなお、私は航平を陥れる為の道具にされる。
「……私、なんで……こんな人の部下なんだろう」
「葛城っ!」
独り言と聞き流すには大きな声を漏らす私を、加瀬君が険しい顔をして止める。
ハッと顔を上げると、青い顔をした加瀬君の向こうで、部長が加瀬君よりもっともっと険しい顔をして私を見ていた。
一瞬だけ、唇を噛んだ。
だけど、心にはもう迷う気持ちすら湧いて来なかった。