常務サマ。この恋、業務違反です
今、私が一番大事に思うものは何か。
思い知ってしまったから、今ここで何が起きても、怖くなんかない。
「これ以上、業務命令は聞けません」
大きく息を吸ってから、吐きだすようにそう言った。
「葛城っ!?」
目を剥いた部長より先に、加瀬君が反応した。
私が何を言い出そうとしているか、わかり切ってるその顔。
そんな加瀬君を横目にしながら、私は立ち上がった。
「私、本日限りで……」
真っ直ぐ部長を睨みつけて口を開いた時、会議室のドアが勢い良く開いた。
私も部長も加瀬君も、ほとんど同時にその音の根源に目を向ける。
そして。
「あっ……」
そこに、思いも寄らない人の姿を見た。
誰よりも先に私が反応して、言葉を飲み込んだ。
「誰だ、君はっ」
突然の乱入者に、部長がこめかみに青筋を立てながら叫んだ。
「突然すみません。私、ウェイカーズ証券取締役部長の高遠と申します」
この場の誰よりも場にそぐわないのに、誰よりも貫録のある姿。
部長は呆気に取られた表情のまま、航平が差し出した名刺を惰性で受け取って、一気に顔色を失うと目を白黒させた。
「ウェ……ウェイカーズのっ……!?」
「平素よりお世話になっております。
葛城さんに至急の用があったんですが、連絡がつかず……。担当の加瀬さんにも取り次いでもらえなかったんで、直接出向いて来ました」
さっきまでの緊迫感が一気に薄れて行くのを感じる。
私はただバカみたいにポカンと口を開けて、部長と飄々と会話をする航平を見つめてしまう。
加瀬君も目を丸くして、部長だけが動揺を隠せず空回っている。
思い知ってしまったから、今ここで何が起きても、怖くなんかない。
「これ以上、業務命令は聞けません」
大きく息を吸ってから、吐きだすようにそう言った。
「葛城っ!?」
目を剥いた部長より先に、加瀬君が反応した。
私が何を言い出そうとしているか、わかり切ってるその顔。
そんな加瀬君を横目にしながら、私は立ち上がった。
「私、本日限りで……」
真っ直ぐ部長を睨みつけて口を開いた時、会議室のドアが勢い良く開いた。
私も部長も加瀬君も、ほとんど同時にその音の根源に目を向ける。
そして。
「あっ……」
そこに、思いも寄らない人の姿を見た。
誰よりも先に私が反応して、言葉を飲み込んだ。
「誰だ、君はっ」
突然の乱入者に、部長がこめかみに青筋を立てながら叫んだ。
「突然すみません。私、ウェイカーズ証券取締役部長の高遠と申します」
この場の誰よりも場にそぐわないのに、誰よりも貫録のある姿。
部長は呆気に取られた表情のまま、航平が差し出した名刺を惰性で受け取って、一気に顔色を失うと目を白黒させた。
「ウェ……ウェイカーズのっ……!?」
「平素よりお世話になっております。
葛城さんに至急の用があったんですが、連絡がつかず……。担当の加瀬さんにも取り次いでもらえなかったんで、直接出向いて来ました」
さっきまでの緊迫感が一気に薄れて行くのを感じる。
私はただバカみたいにポカンと口を開けて、部長と飄々と会話をする航平を見つめてしまう。
加瀬君も目を丸くして、部長だけが動揺を隠せず空回っている。