常務サマ。この恋、業務違反です
航平は姿勢を正して部長を振り返った。
何気ない仕草なのに、部長がビクッと身体を強張らすのは、航平のオーラのせいとしか思えない。
「……ですが、私もこの耳ではっきり聞きましたよ。葛城さんに対するあなたの失言を。……な? 加瀬君」
美し過ぎる冷酷な笑みを浮かべて、航平はさっきからずっと黙っている加瀬君に声を掛けた。
え?と思う間もなく、はい、と加瀬君が硬い声で返事をする。
「……部長、申し訳ありません。ここでの会話は全て録音しておりました」
「何っ……!?」
部長が禿げ頭を汗で光らせながら目を剥いた時、加瀬君が胸ポケットから携帯を取り出した。
そこから聞こえて来るのは、さまざまなノイズで鮮明とは言えないけれど、確かにさっき部長が私に吐いた言葉だった。
『君が一言頷けばそれでいい。……実際に『関係のあった』スタッフからの証言があれば、ウェイカーズも反論出来ないだろうからな』
部長は口をパクパクさせて、力が抜けたようにドスンと椅子に座り込んだ。
それを見て、加瀬君は俯いて携帯をポケットに戻した。
「後は加瀬君に任せていいかな。……希望、行くぞ」
航平は短く私にそう呟くと、腕を掴む手に再度力を籠めて、会議室を大股で横切る。
航平に腕を引かれながら、戸惑いを隠せずに一度大きく加瀬君を振り返った。
そんな私の視線に気付いて、加瀬君も顔を上げる。
そして、部長に隠れて小さく腰の辺りでVサインを作ると、口元だけで笑った。
何気ない仕草なのに、部長がビクッと身体を強張らすのは、航平のオーラのせいとしか思えない。
「……ですが、私もこの耳ではっきり聞きましたよ。葛城さんに対するあなたの失言を。……な? 加瀬君」
美し過ぎる冷酷な笑みを浮かべて、航平はさっきからずっと黙っている加瀬君に声を掛けた。
え?と思う間もなく、はい、と加瀬君が硬い声で返事をする。
「……部長、申し訳ありません。ここでの会話は全て録音しておりました」
「何っ……!?」
部長が禿げ頭を汗で光らせながら目を剥いた時、加瀬君が胸ポケットから携帯を取り出した。
そこから聞こえて来るのは、さまざまなノイズで鮮明とは言えないけれど、確かにさっき部長が私に吐いた言葉だった。
『君が一言頷けばそれでいい。……実際に『関係のあった』スタッフからの証言があれば、ウェイカーズも反論出来ないだろうからな』
部長は口をパクパクさせて、力が抜けたようにドスンと椅子に座り込んだ。
それを見て、加瀬君は俯いて携帯をポケットに戻した。
「後は加瀬君に任せていいかな。……希望、行くぞ」
航平は短く私にそう呟くと、腕を掴む手に再度力を籠めて、会議室を大股で横切る。
航平に腕を引かれながら、戸惑いを隠せずに一度大きく加瀬君を振り返った。
そんな私の視線に気付いて、加瀬君も顔を上げる。
そして、部長に隠れて小さく腰の辺りでVサインを作ると、口元だけで笑った。