常務サマ。この恋、業務違反です
もしあれがアクシデントじゃなくて本当の本当に『セクハラ』現場だったとしたら。
私が半泣きになって「高遠さんがいきなり!」とか言ったら、人事部長はどういう態度に出たんだろうか。
社内の女子社員の間でも流れる『噂』
エグゼクティブに関わるデリケートな話題とは言え、人事部長が知らないはずがない。
セクハラを黙認している、とまでは言わない。
ただ、高遠さんがそんなことをする訳がないと信じ切っているように思えて、そう思わせる根拠がどこにあるのかが気になった。
それもこれも、落ち着いて寛いでいる今だからそう思えるのかもしれないけど。
「とにかく、無事に潜入は成功したみたいだな。良かった」
ホッとしたような加瀬君の声に、言いたいことはいろいろあった。
それでも言い返す前に浮かんで来たのは、あんなことがあった後でも涼しい顔をして書類山積みのデスクに座って、仕事を進めようとしていた高遠さんの横顔。
結局定時を迎えるまで一言も話さなかったな、と思いながら、私が加瀬君に向けた言葉は。
「潜入成功の後、次の指令はなんですか? ボス」
そんな、芝居がかった澄ました一言だった。
私が半泣きになって「高遠さんがいきなり!」とか言ったら、人事部長はどういう態度に出たんだろうか。
社内の女子社員の間でも流れる『噂』
エグゼクティブに関わるデリケートな話題とは言え、人事部長が知らないはずがない。
セクハラを黙認している、とまでは言わない。
ただ、高遠さんがそんなことをする訳がないと信じ切っているように思えて、そう思わせる根拠がどこにあるのかが気になった。
それもこれも、落ち着いて寛いでいる今だからそう思えるのかもしれないけど。
「とにかく、無事に潜入は成功したみたいだな。良かった」
ホッとしたような加瀬君の声に、言いたいことはいろいろあった。
それでも言い返す前に浮かんで来たのは、あんなことがあった後でも涼しい顔をして書類山積みのデスクに座って、仕事を進めようとしていた高遠さんの横顔。
結局定時を迎えるまで一言も話さなかったな、と思いながら、私が加瀬君に向けた言葉は。
「潜入成功の後、次の指令はなんですか? ボス」
そんな、芝居がかった澄ました一言だった。