常務サマ。この恋、業務違反です
ソファに姿勢を正してしっかり座って、シャツのボタンを締めてから緩めていたネクタイをキュッと結び直す。
そうして身なりを整えてから、チラッと私に上目遣いの視線を向け直した。


「昨日あんたが帰った後、俺も一度帰って、また出社した。ロンドン支社とのテレビ会議があったからね。
それが終わったのが午前二時。その後ニューヨークとの電話会議。終わってから三時間仮眠して、今起きたとこ」


そう言いながら立ち上がって、今度は少し大きな欠伸を噛み殺しながら、高遠さんはチラッと私を見遣った。


「つまり、あんたが想像したような『夜の忙しさ』はないってこと」


口元を上げてわずかに微笑むその表情に、ドキッとした。
私の短絡的な思考を戒められた気がして、思わず頬がカアッと赤くなった。


「わ、私っ……! そんな変なこと考えてません!」

「そ? でも別にいいよ。期間限定の秘書にどう誤解されても」


それならなんでわざわざ説明したんだ、と聞きたい。
妙な迫力に押されたまま、私は黙って高遠さんの行動を見守った。
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