常務サマ。この恋、業務違反です
つい数週間前、私が『スパイ』として潜入することが決まった時、加瀬君は私の身上書を作り上げてから、私にも確認してきた。
「もう少し、盛っとく?」
今回のこのミッションをまだどこか本気にしていなかった私は、どうでもいいよって返事をして、加瀬君に身上書を突き返した。
実際に勤務に就いてから困らないように、そこに書かれた内容はほとんど嘘偽りのないものだった。
たった一つの『嘘』と言えば、直近の勤務先が『マーケティング会社の営業担当』となっていたことだけ。実際は『派遣会社の営業担当』で、在勤中、なんだけど。
今問題なのはそんなことじゃなくて、私が実際に持っている『資格』。
就職活動の時、とにかく履歴書に空欄を作らない為に必死に取った、今となっては全く無駄でしかない資格……。
そう、高遠さんが目を通したのは、真実しか書かれていないはずの部分だった。
「秘書検定持ってるじゃん」
「私が持ってるのは二級で、実務は全く必要のないマークシートの試験で……」
「英検二級は?」
「それは、大学受験で一番英語勉強した時で。学校で面接対策とかしてくれたし、友達とノリで受けたら受かっただけで……」
「だろうな。それに、TOEIC500って。そんなレベルで資格欄に書いてるあたり、乏しい英語力をひけらかしてるようなもんだ」
涼しい顔して辛辣に言い捨てる高遠さんを睨みたくなった。
出来なかったのは、言われたことが全てごもっともだったからだ。
「もう少し、盛っとく?」
今回のこのミッションをまだどこか本気にしていなかった私は、どうでもいいよって返事をして、加瀬君に身上書を突き返した。
実際に勤務に就いてから困らないように、そこに書かれた内容はほとんど嘘偽りのないものだった。
たった一つの『嘘』と言えば、直近の勤務先が『マーケティング会社の営業担当』となっていたことだけ。実際は『派遣会社の営業担当』で、在勤中、なんだけど。
今問題なのはそんなことじゃなくて、私が実際に持っている『資格』。
就職活動の時、とにかく履歴書に空欄を作らない為に必死に取った、今となっては全く無駄でしかない資格……。
そう、高遠さんが目を通したのは、真実しか書かれていないはずの部分だった。
「秘書検定持ってるじゃん」
「私が持ってるのは二級で、実務は全く必要のないマークシートの試験で……」
「英検二級は?」
「それは、大学受験で一番英語勉強した時で。学校で面接対策とかしてくれたし、友達とノリで受けたら受かっただけで……」
「だろうな。それに、TOEIC500って。そんなレベルで資格欄に書いてるあたり、乏しい英語力をひけらかしてるようなもんだ」
涼しい顔して辛辣に言い捨てる高遠さんを睨みたくなった。
出来なかったのは、言われたことが全てごもっともだったからだ。