常務サマ。この恋、業務違反です
地上一階の総合エントランスで待ち合わせた後、二人は一番のお薦めだというお店に連れて来てくれた。


有機野菜をふんだんに使ったボリューミーなサラダが看板だというアメリカンダイニング。
もちろんサラダだけじゃなくサンドウィッチやパスタの日替わりもあって、ランチセットにつくパンバスケットで選べるパンは、全てお店の窯で焼き上げているもの。


サラダで足りるかな……と思いはしたけど、向かい合って座った二人が当然のようにサラダランチを注文したから、私もそれに倣ってみた。
そして数分後……。
そんな心配を吹き飛ばすかの如く、私達三人の前に出されたのは言葉通り『山』に盛られたカラフルなサラダの大皿だった。


スモークチキンとピーナッツ、ドレッシングはハニーマスタード。
他の具材もたっぷりで、むしろ食べ切れるかどうかも不安になった。


「美味しいでしょ? もう少し安ければ、毎日来てもいいんだけどなあ」


くるみパンにマーガリンを付けて口に運びながらニコニコする山田さんに、私も大きく頷いた。
本日のランチ、しめて千五百円也。さすがに毎日来たら破産する。


「でも、葛城さんはさあ……。高遠さんとランチ来たりしたら、もちろん奢ってもらえるでしょ?」


ニヤニヤしながら探りを入れて来る新庄さんの視線に、私は苦笑しながら首を振った。


「一緒にランチなんか来たことないし……」


ライ麦パンを小さくちぎって口に放り込みながら言うと、二人は素で目を丸くした。
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