常務サマ。この恋、業務違反です
一時間きっかりで執務室に戻ると、高遠さんは自分のデスクでパソコンに向かって仕事をしていた。
私が出て来た時とほとんど変わらないその姿。
デスクに積まれた書類や書籍が少し増えていたから、きっとこの一時間も仕事をしていたんだろう。
高遠さん、と呼び掛けて自分のデスクの上に小さなトートバッグを載せると、高遠さんは、ん、と短い声を出してチラッと私に目を向けた。
「何? 葛城さん」
「何?じゃないですよ。ちゃんとお昼食べましたか?」
「え?」
私の言葉を聞いて、高遠さんは初めて気付いたというように左手の手首のロレックスに目を落とした。
あ、と口を開けて呟く声を聞かなくても、その仕草だけで十分わかる。
ランチに出掛ける前にちゃんと言ったのに。
生返事だったからもしかして……と気になってはいたけど、予想通りの結果に溜め息が出そうになる。
そして、あまりに予想通りだったおかげで、トートバッグの中の紙袋も無駄にならずに済む。
「はい、どうぞ」
ガサッと音を立てた紙袋を、高遠さんのデスクに置いた。
ん?と首を傾げて、高遠さんはチラッと私を見上げる。
「後十五分で外出の予定入ってるんですよ。だからちゃんとお昼行って下さいね、って声掛けたのに」
やっぱり右から左だったか、と、私は軽く腕組みした。
高遠さんは呆れる私に何度か目を瞬かせてから、軽く俯いてフッと笑った。
「切りがいいとこまでって思ってたら、いつの間にか時間が過ぎてた。サンキュ」
私が出て来た時とほとんど変わらないその姿。
デスクに積まれた書類や書籍が少し増えていたから、きっとこの一時間も仕事をしていたんだろう。
高遠さん、と呼び掛けて自分のデスクの上に小さなトートバッグを載せると、高遠さんは、ん、と短い声を出してチラッと私に目を向けた。
「何? 葛城さん」
「何?じゃないですよ。ちゃんとお昼食べましたか?」
「え?」
私の言葉を聞いて、高遠さんは初めて気付いたというように左手の手首のロレックスに目を落とした。
あ、と口を開けて呟く声を聞かなくても、その仕草だけで十分わかる。
ランチに出掛ける前にちゃんと言ったのに。
生返事だったからもしかして……と気になってはいたけど、予想通りの結果に溜め息が出そうになる。
そして、あまりに予想通りだったおかげで、トートバッグの中の紙袋も無駄にならずに済む。
「はい、どうぞ」
ガサッと音を立てた紙袋を、高遠さんのデスクに置いた。
ん?と首を傾げて、高遠さんはチラッと私を見上げる。
「後十五分で外出の予定入ってるんですよ。だからちゃんとお昼行って下さいね、って声掛けたのに」
やっぱり右から左だったか、と、私は軽く腕組みした。
高遠さんは呆れる私に何度か目を瞬かせてから、軽く俯いてフッと笑った。
「切りがいいとこまでって思ってたら、いつの間にか時間が過ぎてた。サンキュ」