常務サマ。この恋、業務違反です
ランチでちょっと奮発したから、明日はお弁当にしよう。
今日も定時で退社して、スーパーで買い物しながらそう考えた。


普段の私は、急な外出で外食になることもあったし、そうじゃなくてもうちのオフィスには半額会社負担のありがたい社食があるから、お弁当を作って行くなんて結構稀だった。
それでも今は突然外出になるって事態も考えられないし、前夜のうちに仕込んでおく時間も十分ある。
夕飯の残りをメインにして、後は簡単に作れる何品かを添えるだけで、十分立派なお弁当になる。


冷めても美味しい青椒牛肉絲。
それをメインにすれば、大抵他に何を入れても彩りは悪くならない。
そう決めて、夕飯一人分にするには多目に作りながら、ふと考えたのは高遠さんのことだ。


お弁当持って行ったら、高遠さんに差し入れ出来なくなるな。
いや、そもそも今日差し入れたばかりだし、毎日やるわけにもいかない。


いつも高遠さんの食事の心配をする必要はない。それが私の仕事じゃないんだから。
そうは思っても、頭の中にはしっかりと植え込まれた高遠さんのスケジュールが浮かび上がってくる。


今夜もイギリスとのテレビ会議が深夜にあるんだよな……。


ホテルで一泊出来ない平日は、ずっとオフィスビルで過ごすと聞いた。
なんせあのビル、共同ラウンジのある十階に勤務者の為のフィットネスジムまであるゴージャスさ。
高遠さんはほとんど常連で、仕事の合間の暇つぶしにジム通いをして、そこでシャワーを浴びている。


そんな環境があるから、『家』に帰らなくても、日常に差し支えることはほとんどない。
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