常務サマ。この恋、業務違反です
◇
その週末の夜、加瀬君から電話が来た。
誰からかを画面で確認してちょっと憂鬱な気分になりながら、私は義務で電話に出る。
もしもし、と短く応答すると直ぐ、
「今週、報告もらってないよ」
と刺々しい声で言われた。
一瞬ムッとしながらも、私は携帯を持ち直して溜め息をついた。
「だって、特にこれと言って報告することもなかったし」
「それなら、『新情報無し』って報告してくればいい。一週間に一度俺に連絡するっていうのは、葛城の任務なんだけど?」
「わかってるよ」
クドクドとお説教してくる加瀬君に、言いようもなく苛立って、私はもう一つ溜め息をついた。
それでも、自分に課せられた任務と義務はわかっているから、気が進まないながらも静かに唇を開いた。
「ねえ、加瀬君。私がこの任務を遂行したとして、さ……。もしも、高遠さんに非がないってわかったら、どうするの?」
私が派遣秘書としてウェイカーズに潜入したのは、そもそもそれが前提だった。
きっと、ウェイカーズの方……高遠さんっていう人間に原因がある。
それが何かを探るっていうのが、私の期間限定の任務。
だけど、もしも高遠さんに非がないってわかってしまったら……?
そんな疑問が、ほとんど無意識で口をついた。
「非が無いって、決定的な証拠でも掴んだ?」
冷静に返される質問に、そうじゃないけど、と呟いて、私は口籠った。
その週末の夜、加瀬君から電話が来た。
誰からかを画面で確認してちょっと憂鬱な気分になりながら、私は義務で電話に出る。
もしもし、と短く応答すると直ぐ、
「今週、報告もらってないよ」
と刺々しい声で言われた。
一瞬ムッとしながらも、私は携帯を持ち直して溜め息をついた。
「だって、特にこれと言って報告することもなかったし」
「それなら、『新情報無し』って報告してくればいい。一週間に一度俺に連絡するっていうのは、葛城の任務なんだけど?」
「わかってるよ」
クドクドとお説教してくる加瀬君に、言いようもなく苛立って、私はもう一つ溜め息をついた。
それでも、自分に課せられた任務と義務はわかっているから、気が進まないながらも静かに唇を開いた。
「ねえ、加瀬君。私がこの任務を遂行したとして、さ……。もしも、高遠さんに非がないってわかったら、どうするの?」
私が派遣秘書としてウェイカーズに潜入したのは、そもそもそれが前提だった。
きっと、ウェイカーズの方……高遠さんっていう人間に原因がある。
それが何かを探るっていうのが、私の期間限定の任務。
だけど、もしも高遠さんに非がないってわかってしまったら……?
そんな疑問が、ほとんど無意識で口をついた。
「非が無いって、決定的な証拠でも掴んだ?」
冷静に返される質問に、そうじゃないけど、と呟いて、私は口籠った。