常務サマ。この恋、業務違反です
「葛城。言っとくけど、どっちに原因があるかってのは、この際関係ない。
スタッフが長期就労出来ない理由がわかれば、俺はそれでいいって思ってる」

「……うん」

「だって、理由がわからなきゃこっちも対処しようがないから。
ウェイカーズとの契約解除っていうのは、明らかにウェイカーズの方に原因があった場合に考える手段で……。
だから、葛城には見知った事実はありのままに報告して欲しい。どっちに分が悪いことでも」


さすがに担当者だ。
私一人を敵陣に潜入させて、のうのうと平和な日々を過ごしている訳でもないらしい。
それが感じ取れたから、私は大きく息を吸った。


「もしかしたら、今までのスタッフ……。高遠さんにたかってたのかもしれない」

「はあ?」

「何かの見返りに、『ランチ奢って』とか」

「って、何、それ。逆パワハラ……? それじゃ、こっちが紹介したスタッフに非があったってことじゃん」


私の返事にどんどん声を小さくしていく加瀬君が、頭を抱えている姿が目に見えるようだった。


「もしそれが事実だとしたら、ウェイカーズの方から契約更新しない理由は説明出来る。
でも、それならどうしてうちに苦情を申し入れて来ないんだろ?」

「……そんなの、わかんない」

「葛城、少しは何か思い当たることがあるんじゃないの?
逆に聞くけど、スタッフが高遠さんにたかってた理由はなんだと思ってる?」


理路整然とした加瀬君の問い掛けに、私は一瞬だけ躊躇してから、


「……下心?」


微妙に疑問形で答えを返した。
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