常務サマ。この恋、業務違反です
私の返事を聞いて高遠さんは何度か瞬きをしてから、今度はプッと小さく吹き出して笑った。
「言葉がわからないから、空気には敏感か」
「私だって学習します。そりゃ、毎回笑われる為に初めましてを繰り返すのは、私だって結構ストレスで」
「そっか。窮屈な思いさせてたかな。それじゃあ申し訳なかったけど……。
俺は一応、あんたを少し信用出来たから取引先にも紹介してるんだけど」
足元に視線を落としながら、サラッと降って来た言葉を聞いた。
そこにドキッとするキーワードを見出して、私は勢い良く顔を上げた。
先週は社内、もしくは近隣での予定が多かったから、私が差し入れたお弁当を食べながら、休憩時間も一緒に執務室で過ごした。
短い時間でも仕事から離れた高遠さんと一緒に過ごして、高遠さんの内側を少しだけ覗き見ることが出来たかな、って思ってた。
そして、私はそれを、加瀬君には任務の為だと報告した。
『魅了して取り入れ』って加瀬君に言われたおかげで、高遠さんを騙してるみたいな気がしていたけど、高遠さんは喜んでくれた。
そして高遠さんは、私に他意も無く『信用出来た』って言う。
その一言で、高遠さんに近付けたっていう私の感覚は正しいと証明されて、そして、私の『騙し』の行動が浮き彫りになる。
行動どころか……私の存在そのものが、高遠さんが向けてくれる信頼を裏切るものなのに。
黙り込んだ私が機嫌を直せないと思ったのか、高遠さんは身体を屈めてフッと私を覗き込んだ。
「あのさ。確かに葛城さんの言う通り、今までとはタイプが違うって言われてたんだけど……。悪意のある言い方じゃないから、気にするなよ」
窺い見る視線に虚をつかれて、思わずドキッとしてしまう。
「言葉がわからないから、空気には敏感か」
「私だって学習します。そりゃ、毎回笑われる為に初めましてを繰り返すのは、私だって結構ストレスで」
「そっか。窮屈な思いさせてたかな。それじゃあ申し訳なかったけど……。
俺は一応、あんたを少し信用出来たから取引先にも紹介してるんだけど」
足元に視線を落としながら、サラッと降って来た言葉を聞いた。
そこにドキッとするキーワードを見出して、私は勢い良く顔を上げた。
先週は社内、もしくは近隣での予定が多かったから、私が差し入れたお弁当を食べながら、休憩時間も一緒に執務室で過ごした。
短い時間でも仕事から離れた高遠さんと一緒に過ごして、高遠さんの内側を少しだけ覗き見ることが出来たかな、って思ってた。
そして、私はそれを、加瀬君には任務の為だと報告した。
『魅了して取り入れ』って加瀬君に言われたおかげで、高遠さんを騙してるみたいな気がしていたけど、高遠さんは喜んでくれた。
そして高遠さんは、私に他意も無く『信用出来た』って言う。
その一言で、高遠さんに近付けたっていう私の感覚は正しいと証明されて、そして、私の『騙し』の行動が浮き彫りになる。
行動どころか……私の存在そのものが、高遠さんが向けてくれる信頼を裏切るものなのに。
黙り込んだ私が機嫌を直せないと思ったのか、高遠さんは身体を屈めてフッと私を覗き込んだ。
「あのさ。確かに葛城さんの言う通り、今までとはタイプが違うって言われてたんだけど……。悪意のある言い方じゃないから、気にするなよ」
窺い見る視線に虚をつかれて、思わずドキッとしてしまう。