常務サマ。この恋、業務違反です
オフィスに戻るとすぐ、血相を変えた人事部長が執務室に飛び込んで来た。
「部長! さっきからお待ちかねなんですよ! さ、早く応接室へ!」
「わかったから、押すなって、佐藤さん」
人事部長の勢いに押されて、高遠さんは眉間に皺を寄せながら執務室から出て行った。
その姿に一瞬苦笑を浮かべて。
高遠さんを送り出して振り返った人事部長の怖い顔に、条件反射で背筋を伸ばした。
「……私は今朝、ちゃんとあなたにアポイント伺いのメールを出していたんですがね」
「す、すみません」
言い訳を許さない人事部長の態度に、私は慌てて頭を下げた。
「正直なところ、初日のこともあるし、私はあなたの印象はそう良くないんです。……それでも部長がそれでいいなら、文句も言えません」
これみよがしな溜め息を繰り返す人事部長に、私は一拍置いてから顔を上げた。
「……高遠さんが、何を……?」
私の質問に、人事部長は目線を落として、なんとも忌々しそうに息を吐いた。
「今までの誰よりも、傍における秘書だ、と」
「え?」
その言葉に、ドクンと胸が騒いだ。
「葛城さん。はっきり言いますが、これまでの秘書の方は仕事能力という意味では、あなたの十倍は使える人間でした」
人事部長は歯に衣着せずにさらりとそう言い切って、右手の中指で眼鏡をクッと押し上げた。
酷い言われよう。
私、この人に相当警戒されてるんだなあ、と思うと、むしろその言いっぷりに苦笑が漏れた。
「部長! さっきからお待ちかねなんですよ! さ、早く応接室へ!」
「わかったから、押すなって、佐藤さん」
人事部長の勢いに押されて、高遠さんは眉間に皺を寄せながら執務室から出て行った。
その姿に一瞬苦笑を浮かべて。
高遠さんを送り出して振り返った人事部長の怖い顔に、条件反射で背筋を伸ばした。
「……私は今朝、ちゃんとあなたにアポイント伺いのメールを出していたんですがね」
「す、すみません」
言い訳を許さない人事部長の態度に、私は慌てて頭を下げた。
「正直なところ、初日のこともあるし、私はあなたの印象はそう良くないんです。……それでも部長がそれでいいなら、文句も言えません」
これみよがしな溜め息を繰り返す人事部長に、私は一拍置いてから顔を上げた。
「……高遠さんが、何を……?」
私の質問に、人事部長は目線を落として、なんとも忌々しそうに息を吐いた。
「今までの誰よりも、傍における秘書だ、と」
「え?」
その言葉に、ドクンと胸が騒いだ。
「葛城さん。はっきり言いますが、これまでの秘書の方は仕事能力という意味では、あなたの十倍は使える人間でした」
人事部長は歯に衣着せずにさらりとそう言い切って、右手の中指で眼鏡をクッと押し上げた。
酷い言われよう。
私、この人に相当警戒されてるんだなあ、と思うと、むしろその言いっぷりに苦笑が漏れた。