常務サマ。この恋、業務違反です
その後の高遠さんは、なんだか一線引いたような態度で私に接した。


一日中外出続き、私と高遠さんは四六時中行動を共にしているのに、余所余所しい態度に戸惑った。
何か気分を害するようなこと、してしまったんだろうか。
それがずっと気になって、いつも通り定時で退社した後も高遠さんが気になって仕方が無かった。


明日のお昼時は、久々に外出の予定がない。
それならお弁当持って行けるな、と夕飯を作りながら、人事部長の言葉を思い出して気持ちが躊躇った。


お弁当を一緒に食べる、という口実で高遠さんと一緒に過ごしたランチタイムのプライベートアワー。
私はその時間で、仕事をしている高遠さんとは違う素の表情を見ることが出来た。
だけどそれは……加瀬君に報告出来るような核心に迫ったものじゃない。


甘く煮付けた人参が苦手だ、とか。幼少期からの習慣で、好物はジャンクフードだ、とか。
小中高と海外生活だったから、日本で昔からの友人はいない。
その代わり、ニューヨークとフランクフルトに、一番親しい友人がいる。
日本人なのに、東京で過ごす自分をアウェイ感半端無いって呟く。


あんなイケメンなのに、割と自分のことには無頓着。
それでも他人への礼儀はスマートにこなせる人。
だから、人目につくのも気にせずに、お弁当の容器を給湯室で洗って返してくれたりする。
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