常務サマ。この恋、業務違反です
ふっと気付いた時、窓の外の都会の空は白み始めていた。
テーブルを挟んだ向かい側のソファに、高遠さんが横たわっている。
私は身体を起こしながら、身体に掛けられていたストールに気付いた。
「……もう」
どこまで自分には無頓着な人なんだろう。
ストールを腕に掛けてゆっくり立ち上がる。
私は足音を忍ばせて高遠さんが眠っているソファに近付いた。
ソファの端からダランと落ちた左手首の時計を身を屈めて覗き込むと、もう五時半を回っていた。
「高遠さんが風邪引いて寝込んだりしたら……代わりは誰もいないんですよ」
誰にともなく呟きながら、第一ボタンの外れた首筋をちゃんと覆えるように、高遠さんの肩口からしっかりとストールを掛けようとして。
「……ん」
微かな寝息を漏らした高遠さんに気を取られた瞬間。
思いっ切り右手首を掴まれて、そのまま引っ張りこまれた。
思い掛けない行動に身体のバランスを崩して、私は高遠さんの身体の上に倒れ込んだ。
それでも慌てて身体を起こそうとして……。
「……!?」
身体に回った腕の力の強さに、身動き出来ずに硬直した。
床に膝をついて、上半身を大きく高遠さんに覆い被せて。
私はその腕にがっちりと抱え込まれた格好で、高遠さんの胸に顔を埋めていた。
「た、高遠さ……」
下から抱え込んでくる力を振り解けない。
ほんの少し上の位置から、高遠さんの静かな寝息が聞こえて来る。
そして、私の耳元に伝わる穏やかで規則正しい鼓動。
テーブルを挟んだ向かい側のソファに、高遠さんが横たわっている。
私は身体を起こしながら、身体に掛けられていたストールに気付いた。
「……もう」
どこまで自分には無頓着な人なんだろう。
ストールを腕に掛けてゆっくり立ち上がる。
私は足音を忍ばせて高遠さんが眠っているソファに近付いた。
ソファの端からダランと落ちた左手首の時計を身を屈めて覗き込むと、もう五時半を回っていた。
「高遠さんが風邪引いて寝込んだりしたら……代わりは誰もいないんですよ」
誰にともなく呟きながら、第一ボタンの外れた首筋をちゃんと覆えるように、高遠さんの肩口からしっかりとストールを掛けようとして。
「……ん」
微かな寝息を漏らした高遠さんに気を取られた瞬間。
思いっ切り右手首を掴まれて、そのまま引っ張りこまれた。
思い掛けない行動に身体のバランスを崩して、私は高遠さんの身体の上に倒れ込んだ。
それでも慌てて身体を起こそうとして……。
「……!?」
身体に回った腕の力の強さに、身動き出来ずに硬直した。
床に膝をついて、上半身を大きく高遠さんに覆い被せて。
私はその腕にがっちりと抱え込まれた格好で、高遠さんの胸に顔を埋めていた。
「た、高遠さ……」
下から抱え込んでくる力を振り解けない。
ほんの少し上の位置から、高遠さんの静かな寝息が聞こえて来る。
そして、私の耳元に伝わる穏やかで規則正しい鼓動。