金魚
『空白』
千夏は、もてる方と言えばもてる方で、ラブレターなんかはしょっちゅうだった。
「男子も馬鹿やね、本当に想ってるん、だったら、千夏の事考えろよ。」
里菜が文句を言いながら、ごみ箱に淋しそうに捨てられたラブレターを見つめ、言った。
「そうだよ。」
海和子も後から続き言う。
その言葉を聞いた千夏は、一度深呼吸をして、口を開いた。
「いいよ、もう私は、優希との事、忘れる事にするよ。」
私の言葉をを聞いた二人は、しばらく黙り込んでしまった。
「あんた、それで良いの?、立ち直るんだったら、また、恋をしようって思わないの?。」
千夏は、海和子の言葉に驚き、声が出なかった。
「あんた、ソレは優希の事が忘れられないから、他の人に恋をできないじゃないの?」
問い詰めてくる海和子の言葉に揺れる千夏。
図星だった。
「ど、どうしたの、ミワ。」
千夏は恐る恐る聞いた。
震えだす海和子。
「ミワ、ソレは言いすぎじゃない。」
里菜が言ったその時。
「バチンッ」
ソレは突然だった。
海和子の手が、千夏の頬に強くぶつかった。
海和子は、吹っ切れた様に、千夏に吠えかかった。
「あんた、いい加減にしなよ、自分に正直になりすぎなんだよ。」
「えっ。」
千夏は、思わず言葉を失った。
「ハッキリ言わせてもらう、何か千夏、ムカつくんだよ、そうゆう優柔不断な所。」
千夏の目から涙が溢れだす。
「この際ハッキリ言わせて、あんたは恵まれてる方だよ、こんな沢山の人に好かれて、正直羨ましいかった。」
海和子が千夏に、そう言うと、里菜も続いて、
「そうやよ、チナ。」
と、励ましの言葉を言った。
「み、ミワ、リナ。」
千夏の涙は、未だおさまらない、それどころか、余計に溢れてくる。
それを見た、海和子は千夏をそっと抱き締めて、小さい声で囁いた。
「大丈夫、私達がいるよ、何恐がってるんだよ、一つで良いから読むぐらいしなよ、もったいないから。」
その時から、千夏の空白は、埋まり始めた。
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