距離のすすめ
始まり
いつからこんな関係になってしまったんだろ。

こんな、体だけが繋がる関係が……





















「最近元気ないね。なんかあった??」


心配するように伺ってきたのはバイトの先輩、黒沢遼だ。


「や、ちょっと……」


そう答えたのは俺、柿崎壱。
そう、ここ最近ある悩みを抱えて気分が優れないでいた。

その悩みとは……


「俺でよかったら聞くよ?」

「あーん、いや…」


俺は遼先輩のことを好きになってしまったのだ。
もともと自分が同姓愛者という自覚はあったのでそこまで抵抗はなかった。
なにが問題なのかというと、バイトのシフト上、必ず週に二回は一緒になる。
それだけなら嬉しいのだが、遼先輩は毎回彼女の愚痴をこぼす。
そう、彼は異性愛者で彼女もいるのだった。


「そんな悩んでんの?」


「まぁ…」


そりゃ長い間一緒ならいやでも考えてしまう。
悩まなくてもいいものを、悩んでもどうにもならないことを、いつまでもエンドレスリピート。

だって、ほかに考えることがないんだ。
俺の中には遼先輩しかいないんだ……














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