◇Sleeping Beauty◇~暁の目覚める時~
ーーーーーーーーーーーーーーーー
深い森の奥深く、いばらに囲まれた1つの塔があった。足を踏み入れれば最後、生きては出られないとさえ言われている。
「魔法使いがここに何かを隠してるのは本当みたいだな」
その塔へと足を踏み入れた男、ルークは旅をする剣士だ。その漆黒の髪と瞳が、月に照らされる。
「ここに、お前がいるかもしれない……」
ずっと探しているたった一人の大事な存在を、俺は探している。その為に長い旅をしてきたんだ。
ーシュルルルッ!!!
「チッ!!邪魔だ!!」
ーザシュッ!!!
俺はツルを切り払いながら、塔の頂上を目指す。
階段を駆け上がる音がやけに耳についた。
「どんどん沸いてきやがる……」
まるで、塔の上へは、誰も寄せ付けたくないみたいに。
ーシュルルルッ!!!
ーザシュッ!!
ツルをなんとか払い、やっと塔の頂上へとつくと、大きな扉が目の前に現れた。
手で押そうと、扉に触れる。
その瞬間ー…………
『きょう……にぃ…』
………声が聞こえた。
またあの声だ………。
俺にとって、どんなモノにも代えられないくらいに大切な、大切な………
「お前は、誰なんだ………」
大切だと分かるのに、誰なのかが分からない。
ただ、見つけ出さなければ、その一心でここまで旅をしてきた。
この扉の向こうにいるのか?
そう期待を込めて、俺は扉を開け放った。