にじいろ。
少女は帰ってほしかったのだ。
彼がここにいては、
自分の調子が狂って仕方がない。
まあ、こんな自分の気持ちなんて
この少年にわかるはずもないのだろうけれど。
「もうすぐ電車来るから。じゃあね」
彼が離れてくれないのなら
自分が離れるしかない。
そう考えた少女は
座っていたベンチから距離を置いた。
「あ、おい」
少年は少女を引き止めようとするが
「うるさい。話なんて聞いてやらないんだから」
少女は冷たく言い放ち、
やって来た電車にさっさと乗ってしまった。
ばか、と自分を責めながら。
そして。
胸がきりりと痛むのを我慢しながら。