にじいろ。
マフラーの隙間から、彼を一瞥する。
すると彼が何かを言っているように見えた。
窓が閉まっているため
声は聞き取れなかったし、
口元の動きだけで判断することもできなかったが
少女にとってはそれでよかった。
だんだんと彼の姿が小さくなる。
少女は視界の中から少年を消し、
外の景色を見ることにした。
「……これで、よかったのかな」
少年には悪いことをしてしまったという罪悪感が
彼女を締めつける。
だけど
自分を自分として保つためには
この方法しかなかったのだ。
「きみが私に話しかけるからいけないんだよ……」
静かな電車の中で、ぽつりと呟く。