ぎゅぎゅっと短編詰め放題
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────ガチャりと、ドアの開く音。
それは本当に突然だった。
彼がいなくなって、一ヶ月くらい音信不通が続いて、完全にわたしは捨てられたと思って、そろそろふたりで暮らしていたこの部屋も引き払わなきゃなと思っていたその時だった。
いきなりの来客。というか、春人本人だった。
「琉偉、ただいま」
あの頃と同じように。あなたは柔らかく笑いながら、家に入ってきた。
「琉偉のニオイ久しぶりだー」
あの頃と同じように。あなたはわたしに抱きついて、そっとニオイを嗅いだ。
────わ、けがわからない。
あまりにも普段どおりの彼に、呆気を取られて。
わたしはただ、彼に成されるがまま抱きつかれていた。