ぎゅぎゅっと短編詰め放題
ーーだけど、それが運の尽き。
『お前みたいな暴走するやつがいるからいまだだに事故は減らねぇんだよ』
すみません、年々交通事故が増え続けるのは、全て私の責任っす。
『日本の事故はな、お前みたいなやつがいるから起きるんだよ』
すみません、日本で起きてる事故は、全て私の責任っす。
浴びせられる、罵声の数々。
耐えながらもふと蘇る、ホームページのクチコミ。
「鬼教官なんて一人もいない」
い、い、いるやないかーい。典型的な、絵に描いたような鬼教官がいるやないかーい。
教習所に通う生徒を、ストレスのはけ口にする鬼教官の塚原(つかはら)さん。
彼は自分から自己紹介なんてものはしないし、横目で名札をチラッと見ただけだから苗字しか知らない。
大人なら、自己紹介くらいしろよって話だ。
常に黒いスーツとサングラスをしているイカつい姿はただでさえ生徒を萎縮させるというのに。
彼の口から出てくる言葉は、厳しいなんてのを通り越して、もはや嫌がらせとしか思えない。
彼ひとりのせいでこの教習所の評判がガタ落ちかと思うと、わたしはこの教習所にひどく同情した。