ぎゅぎゅっと短編詰め放題





「笑顔で優しい教習所なんていうポリシーを掲げているせいでな」

「……」



─────途端、塚原さんが話し始めた。




「この教習所は、入会数ナンバーワンだけど、路上に出てからの事故の数も、残念ながらナンバーワンだ」


「……」


「ここの教習所を出たものは、運転が楽しいってだけで終わって、事故の怖さが理解できてない奴らがほとんどだ」

「……」


「楽しく教習が出来ればいいなんて、結局はその場しのぎの優しさでしかねぇんだよ」



この鬼教官は。人生の壁だと思ってた。

厳しい、嫌がらせのような言葉は、あまりにも理不尽だと思ってた。


だけど、そんな鬼教官の壁は、思っていたよりも、高く立派だった。




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