ぎゅぎゅっと短編詰め放題




一週間ほど、教習の休みが続いて、久しぶりに教習所に行った。

……塚原さんいるかな。ふと思う。



私はあれから、NGは出していない。

あんな話を聞いてしまったら、出せるわけがない。



あんなにも、生徒のことを考えてる人を、拒否なんて出来るわけない。


なのに。




「篠原さん、篠原咲都さーん」

今日の教官は、塚原さんではなかった。


名前は知らないけど、とても優しい人だった。

安全速度で走れば怒られなかったし、ブレーキをかけるのが少し遅れても何も言われなかった。

それどころか、良いところを走れてるねって褒められた。

今までは本当に塚原さんづくしで、褒められたことなんてなかったからむず痒かったけど、



これで友人たちが言っていた


「やっぱり、教習は楽しくないと」



という、気持ちが、わかった気がした。




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