phanlife
[01] 王都、そして蠢く謎
謎は謎を呼ぶ
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!」
爽やかな晴天の下、あちこちから活気に満ちた声がする。このご時世、露店事業も世知辛いものがあると聞くし、他の露店には負けられないんだろう。
まあそんなこと、旅人の俺には関係ない訳で。
俺は人の波に流されながら、ふらふらと街中見物をしている。
世界でも栄えている国、フィルミー王国・フィルミーシティに来たのだから、名所観光はしておかなきゃ勿体ない。まあ、平和な国と観光事業が銘打っているところだから、娯楽施設は全くないけど……。
と、そんなことを考えながら、何気なく露店を見やる。そこには、顔面蒼白で硬直した(しかも視線の先は俺の)おじちゃんが居た。
「きゃあああっ!」
「ひいいい!」
ばたばたと人々が逃げ始める。脱兎のごとく逃げ惑う人々は、呆気に取られた俺に構うことはない。
「……ええっと」
取り残された俺は、自分の格好を見てみる。
まあ確かに、黒灰色黒黒灰色と、黒系統のオンパレードである。でも。灰色のショートカットに瞳、増して深いグレイのコートだけど。黒いズボンに黒い革靴だけど!
「そこまで怪しくないと思うんですが……」
たぶん、俺の主張は正しい。
「も、もも」
顔面蒼白なおじちゃんが、「も」を連呼する。
「桃?」
全く意味が分からない。
首を傾げると、おじちゃんの隣に立った若い兄ちゃんが、びっと俺を指す。
その時、風を切る音が僅かに聞こえた。ぞわりと得体の知れないものが、背筋を駆け抜ける。
「ぼく、危ない!」
「誰が『ぼく』だ誰がっ!」
俺は異議を叫んで(語弊はない)、その場から飛び退いた。ひゅんと風を切る音が聞こえ、一息吐く前に、もう少し距離を取る。
振り向くと、そこにはモンスターが居た。
俺(一六一.五センチ)の肩ほどの大きさで、まるで悪魔のような顔をした――と言うのは、教科書からの引用だ。見間違えようのない、 フォーマルなゴブリンくんである。掌には、長剣(ロングソード)を持っていた。ちなみに長剣は長さが一メートルくらいの剣を指している。
だけど、モンスター特有の気配だとか、殺気だとかが感じられなかった。俺が攻撃を避けられたのは、剣が風を切る音が聞こえただけだ。モンスターが近くに入れば、戦い慣れた人なら分かるはずなのに。
爽やかな晴天の下、あちこちから活気に満ちた声がする。このご時世、露店事業も世知辛いものがあると聞くし、他の露店には負けられないんだろう。
まあそんなこと、旅人の俺には関係ない訳で。
俺は人の波に流されながら、ふらふらと街中見物をしている。
世界でも栄えている国、フィルミー王国・フィルミーシティに来たのだから、名所観光はしておかなきゃ勿体ない。まあ、平和な国と観光事業が銘打っているところだから、娯楽施設は全くないけど……。
と、そんなことを考えながら、何気なく露店を見やる。そこには、顔面蒼白で硬直した(しかも視線の先は俺の)おじちゃんが居た。
「きゃあああっ!」
「ひいいい!」
ばたばたと人々が逃げ始める。脱兎のごとく逃げ惑う人々は、呆気に取られた俺に構うことはない。
「……ええっと」
取り残された俺は、自分の格好を見てみる。
まあ確かに、黒灰色黒黒灰色と、黒系統のオンパレードである。でも。灰色のショートカットに瞳、増して深いグレイのコートだけど。黒いズボンに黒い革靴だけど!
「そこまで怪しくないと思うんですが……」
たぶん、俺の主張は正しい。
「も、もも」
顔面蒼白なおじちゃんが、「も」を連呼する。
「桃?」
全く意味が分からない。
首を傾げると、おじちゃんの隣に立った若い兄ちゃんが、びっと俺を指す。
その時、風を切る音が僅かに聞こえた。ぞわりと得体の知れないものが、背筋を駆け抜ける。
「ぼく、危ない!」
「誰が『ぼく』だ誰がっ!」
俺は異議を叫んで(語弊はない)、その場から飛び退いた。ひゅんと風を切る音が聞こえ、一息吐く前に、もう少し距離を取る。
振り向くと、そこにはモンスターが居た。
俺(一六一.五センチ)の肩ほどの大きさで、まるで悪魔のような顔をした――と言うのは、教科書からの引用だ。見間違えようのない、 フォーマルなゴブリンくんである。掌には、長剣(ロングソード)を持っていた。ちなみに長剣は長さが一メートルくらいの剣を指している。
だけど、モンスター特有の気配だとか、殺気だとかが感じられなかった。俺が攻撃を避けられたのは、剣が風を切る音が聞こえただけだ。モンスターが近くに入れば、戦い慣れた人なら分かるはずなのに。