もしも緑間くんと恋をしたら
私は言い返せずに、黙り込んだ。

彼の言うことは、間違っていない。

しかし……よく見てみよう。
そう、この席順がもはや私には地獄……。

四人がけのテーブルを二つ使っているとはいえ、さつき、青峰くん、黒子くん、黄瀬くんが同じテーブル、私と紫原くんと緑間くん、そして赤司くんが同じテーブル。

こんなクセのきついテーブルが、他にどこにあるものか。

隙間はあるものの、さつきと私は一応隣ではある。

つまり、私とさつきの周りにはキセキの世代のメンバーで固められている。

や……ややこしい……。

「緑間くん、私……男の子と話すの慣れてないの」

眉をハの字にしながら、私は彼に正直に話した。

姿勢を正した彼は、私を見下ろしながら口を閉ざしたまま、眼鏡を左手で押し上げた。

「ふん、そんなことはどうでもいいのだよ。俺も女と話すのは不慣れだからな」

「……うん」

「みどちんが、そんなんだから女の子寄ってこないんじゃないのー?」

「う、うるさいのだよ、紫原」

さつきのテーブルほど盛り上がってもないし、楽しい会話が飛び交ってるわけじゃない。

なのに、なぜだろう。

これが普通なのかと思えば、少しは肩の荷が下りた。

「くすっ」

紫原くんと緑間くんのやりとりを見て、私はくすっと笑ってしまった。

のんびり屋さんの紫原くんに振り回されてる緑間くんの様子が面白くて。

赤司くんは相変わらず、黙ってみんなを観察しているように思える。

かといって、怖い顔をしているわけではない。

何か考えながら、人間観察でもしてるような感じだ……。

「あ、みちるん笑ったー!」

さつきが急に横入りしてくる。

さっきまでそっちで盛り上がってたのに、ちゃんと聞いたり見てたんだなー、さつき。

そういう観察力は、このチームのマネージャーやってるだけあるのかもしれない。

「紫原くんと緑間くんの会話がおもしろくて」

無表情でジュースを飲む紫原くん、はっと表情が崩れた緑間くん。

触れ合わなければ、知らない顔だったかもしれない。
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