もしも緑間くんと恋をしたら
「あれ?緑間」

青峰くんが気付いたとき、緑間くんがこのクラスに足を入れていた。

「おはようなのだよ、斉藤」

「お、おはよう……」

「お前、麻雀牌のキーホルダーなんて持ってないか?」

「え?」

「おは朝の占いで、ラッキーアイテムが麻雀牌だったのだよ」

「お、おは朝……?」

そのやり取りを見て、さつきが声を殺して笑い出す。

「みどりん、おは朝の占いのチェックしてるの。そこに載ってるラッキーアイテムを毎回持って歩くのが、みどりんなの」

さつきは笑いながら、私に説明してくれた。

占い……信じる人なんだ……。

「その通りなのだよ。だが、今日に限ってはなかなか調達しにくいものだったのだよ。まさか、麻雀牌とはな……」

占いのラッキーアイテムを調達するにしても、顔色ひとつ変えず頼む姿は確かに笑えてしまう。

でも、一つ彼を知ることができて嬉しい気持ちがあった。

カバンの底に仕舞いこんでいた、麻雀牌のキーホルダーを取り出し、緑間くんの手のひらに乗せた。

「すまないのだよ」

「これあげる。要らないかもしれないけど、持ってて欲しい」

私は、麻雀牌キーホルダーを乗せ、広がった緑間くんの手のひらを閉じるように包んだ。

彼の指が傷付かないように優しく。

「大事なものじゃないのか?」

「何個もあるから大丈夫!でも、これ私の好きな牌なの。赤五筒(あかウーピン)っていって、これ持ってるだけで一つ強くなれるんだよ」

麻雀の知らない人に、麻雀牌のことをやんわり言うにはこんな感じで多分伝わる。

そう信じて、彼に言った。

「なるほど。麻雀牌にも意味があるのだな。なかなかこれがラッキーアイテムになることはないだろうが、有り難く受け取ることにするのだよ」

そう言って、緑間くんはこのクラスを出て行った。
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