もしも緑間くんと恋をしたら
(あぁ……赤五筒(ウーピン)のキーホルダーあげちゃったよぉー……。)

いくら気になる相手とはいえ、私がお守り代わりにしていた赤五筒のキーホルダーをあげることにちょっと後悔している。

たくさんあるなんて嘘だった。

赤五筒……赤筒と呼ばれる牌は、麻雀のやる人なら大抵好きだろう。

麻雀とは四人でやるテーブルゲームだけど、そこに役というものに点数をつけて勝負するのだ。

ざっくり言うと。

それで、その赤色の牌は一つ持っているとその役を一つ強くするのだ。

その赤い牌というのは、四つある。

赤萬、赤筒、赤索だ。

その中の赤萬と赤索は一個ずつ。赤筒は、二個存在しているのだ。

だから、麻雀をやる人は大抵この赤筒を好む。私もその中の一人……赤筒をお守りにしていたわけだ。

そもそも麻雀なんて、実践して覚えるものであって、本を読んだり口頭で覚えてもそれが実践で活かせるとは限らない。

だから、誰にも言わなかった。

赤筒の大切さなんて、他の人に話したところで実践してない人からするとなんて事のない、ただの赤色の麻雀牌だから……。

緑間くんだって、大事なものじゃないのかって訊いてきたけど、それは私の私物だからであって、この牌の意味なんか知る由もない。

そんなことを、強要するつもりもないから、説明するとしても本当ざっくりで良い。

赤司くんが言うみたいに、実力をつけたところで天に見放された日は痛い目を見る。

実力なんてものは、その痛さを軽減するだけのものに、過ぎない。
牌に愛されなければ、麻雀なんて勝てるわけない。

さて……赤筒をあげてしまった私を牌は、今まで通り愛してくれるだろうか……。
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