もしも緑間くんと恋をしたら
本来の私の悩みの解決策など見つからず、そのまま朝を迎えてしまった。

(あー、寝られなかった……)

私は重いまぶたを幾度とこする。

緑間くんのことで寝られなかったのもあるが、叔父さんにもらった五筒をキーホルダーに改造することにも時間を割いてしまっていた。

その改造した五筒キーホルダーは、堂々と私の指定バッグにぶら下がっている。

さつきにもキセキの世代のメンバーにも打ち明けたんだ。もう隠す必要はない。

「斉藤」

急に下駄箱で緑間くんに呼ばれた。
私は、直ぐ様見上げる。

「あ、緑間くん。おはよう」

挨拶をしたものの、彼はそっぽを向いていてこちらを見ようとしない。

どうしたんだろう。

不思議に思ったけれども、女の子が苦手という彼だから違和感などない。

「もう隠す必要はないということか。そのキーホルダーは」

「うん、みんなのおかげだよ」

下駄箱で話すのはダメだという暗黙の了解で、二人で歩きながら教室へ向かう。

「そうか。斉藤、携帯電話は持っているのか?」

「まだ持ってないよ?」

「そうか……連絡の取り合いに悩むのだよ」

「私と連絡取ろうとしてくれてるの?」

「今週末……その、あれ……困るだろ」

緑間くんは時たまこちらを見下ろし、そう言ってくれた。
すごく気を遣ってくれているのが、ひしひしと伝わってくる。

「もし、良ければ……パソコンでも……」

「それは家族に見られないのか?」

「私のパソコンだよ?」

「なら、それでやり取りをするのだよ」

と、緑間くんが足を止めた。
私も足を止める。
私のクラスの前だった。

「それで良ければ」

そう言うと、緑間くんは無言で紙を差し出してきた。
目線はそらしたまま……。

彼がくれた紙を受け取ると、緑間くんは用が済んだと言わんばかりにその場を後にした。

(あっ……)

去っていく背中を数秒見つめたあと、緑間くんに渡された紙を広げた。

たった一行。

彼のアドレスが書かれていた。
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