もしも緑間くんと恋をしたら
放課後、いつもならさつきと別れたあと近くの本屋に行って、雑誌などを立ち読みし、そのあと帰宅してネットゲームなんかしたりして、暇をつぶしている。

しかし、今日という今日は、さつきとの約束であの広い体育館へ向かわなくてはいけない。

なんだ、この義務感。

「ほら、行くよ!」

おろしていた髪を結ったさつきに引っ張られて、重々しい足を一歩、また一歩進めていく。

私の足が重々しいのは、名前は聞いたことがあっても話したこともほとんど見ることもない、キセキの世代メンバーに怖気づいていたのかもしれない。

キセキの世代のメンバーで唯一話せるのが青峰くんだけって……。

「みちるんは、ここから見学しててね」

体育館の外ではあるものの、その扉はキセキの世代が練習するところを間近で見られるとっておきの場所。

他にもチラホラ女生徒は居るけれど、私みたいな無の表情で立っている者はいない。

「さつき!もし、もし……やっぱり興味無かったら帰ってもいい?」

去ろうとするさつきを呼び止め、私はそんなことを訊いた。

隣にいる女生徒に変なリアクションをされたのは言うまでもない。

「そのときは……そうだね、仕方ないから先に帰ってて!」

「うん」

「でも、何か生まれるものがあったら……そのときは一緒に帰ろうよ」

そう、彼女は言った。

それはそれは、自信満々に。
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