もしも緑間くんと恋をしたら
「よく分からないけど、ありがとう」

「俺さーめんどくさいこと嫌いなんだよねー。だからさー、はっきり言うけどみどちんと斉ちん、上手く行かないよ。俺と付き合うほうが楽だよー?」

「え?どうしてそんなこと言うの?」

「みどちんより、俺の方が斉ちんのこと好きだもん。好きだっていっぱい言うし、抱き締めたいって思ったら抱き締めるし、キスしたかったらキスするー」

私は黙って彼の言い分を聞くことにした。
確かに、緑間くんは不器用で、照れ屋さんで素直に物事を言ってくれない。
占いに夢中で、もしかしたら相性悪い日は口も利いてくれないかもしれない。
好きだって一言も、声に出して頻繁には言ってくれないかもしれない。
嫉妬深くて、他の男の子と話していたら、眼鏡の奥の冷たい瞳で、私を見下ろしてくるのかもしれない。
カッとなって、冷酷なことを吐くかもしれない。

「俺だったら、斉ちんを泣かせない」

紫原くんはそう言い切った。
めんどくさいことが嫌いなのに、私を振り向かせようとしてくるのだけは別なのだろうか。

「めんどくさいことは嫌いなんでしょ?なら、私なんて好きになってもめんどくさいだけだよ?」

「えー、どうしてー」

「私は、めんどくさいことが好きだから。だから、めんどくさい緑間くんのことが好きなの。簡単に攻略できないから、夢中になるんだよ」

私はそう返した。
これで一旦は引いてくれるだろう。
そう信じて……。
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