もしも緑間くんと恋をしたら
「おい、黄瀬!またお前のファンが来ている。うるさくて集中できないのだよ」

シュート練習していた手を止め、緑間くんが黄瀬くんに不満をぶつけた。

そりゃそうだ。

さっきから、わーキャーうるさいのは私も同じ。

「あぁー、また来てるっすね。この前も注意したんすけど……」

「やかましいのだよ。今すぐ注意してくるのだよ」

「緑間っち、本当は羨ましいんじゃないっすかー?」

「……女など興味ないのだよ」

黄瀬くんはそんなやりとりを緑間くんと交わしたあと、こちらの方に走ってきた。

「ちょっと!困るっす」

汗をかいていたとしても、キラキラして見えるのは黄瀬くんだからなのだろうか。

隣の女生徒は、黄瀬くんに叱られてシュンとしている。

「あれ?新顔っすね!キミも俺の……?」

黄瀬くんは不思議そうに私を眺めてきた。

キミも俺のファン?と言いたかったのだろうか。

「いえ、桃井の友達です。何故か見学しろって言われてるんですよ。大丈夫です、大人しくしてますから」

不器用に笑ってみせるも、黄瀬くんは数秒眺めたあと、

「あ、そうなんっすか。じゃあ、そう伝えとくっす」

といって背を向けた。

数秒考えこんでたのは、さつきの友人が何故見学させられてるのか、っていう疑問でしょう。

「緑間っち、あそこの左にいる子、桃っちの友達だって言ってたっすよー」

「桃井の?」

緑間くんが、左手でズレた眼鏡を押し上げながらそう言っていた。

すかさずさつきが間に入り、

「そう、友達なの!いろいろあって見学してもらってるの」

と説明しているのが聞こえる。

「……斉藤みちるだな」

赤司くんが私の名を発言した。

「赤ちん知ってるのー?」

私の名を当てた赤司くんに、紫原くんが被せて問う。

「桃井といつも一緒にいる女生徒だから知っていて当然だ」

「そーなのー?」

おっとりした話し口調の紫原くんと、さすがの学年トップ赤司くんが私を見る。

ペコっと一礼したものの、どういう振る舞いをしていいのか分からない……。

「さつきがツレに見学させたいってことは、なんかあんだろ。さ、練習始めよーぜ」

と、青峰くんが切り出し、私の気まずさは飛んだ。
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