水晶の少年 ~SEASON~
「時雨、何があったの?
警察からの電話なんだったの?」
問い詰めるように尋ねる質問にも
時雨の反応はかえらない。
処置室のドアが開いて、
ストレッチャーに乗せられた
小母さんが、運び出されてくる。
「あのー、小母さんは?」
「大丈夫ですよ。
過度なストレスがかかったのかも知れません。
部屋を取って暫く休ませて様子を見ましょう。
家族の方は?」
お医者様の言葉に時雨の方に視線を向ける。
その人は、ゆっくりと時雨の傍に近づいて
目線を合わせながら、小母さんの状態について説明しているみたいだった。
そんな最中、飛翔が慌てて走りながら近づいてくる。
飛翔の髪には、真っ白な雪が残り
雪の中走り回っていたのか、髪も服も水分を含んでいるみたいだった。
逆側から駆けつけてくるのはタオルを手にした飛翔の友達。
友達からバスタオルを受け取った飛翔は、
タオルで髪や服を拭きながら私と時雨の前に近づいてきた。
小母さんを乗せたストレッチャーは、
病室に運ばれていく。
とりあえず、小母さんの病室まで
時雨・飛翔・私、
そして飛翔の友達はついていく。
「時雨?
何があった?」
飛翔が沈黙を守り続ける時雨に話しかける。
「時雨、警察からの電話なんだったんですか?」
トーンを荒げて告げた時、ようやく時雨が我に返ったように
反応を示した。
「時雨……?」
「由貴、飛翔。
警察、築城(つきしろ)警察署に行かなきゃいけない。
そこに親父と氷雨が居るんだ」
その言葉に飛翔は慌てて携帯電話を取り出す。
「飛翔、僕がすぐにタクシーを呼ぶよ。
三人とも行くんだよね。
ここに居る人には僕が傍に居るから」
そう言うと、飛翔の友達は慌ててナースセンターの電話を借りて、
タクシー会社に電話してくれる。
雪道に慣れない街。
なかなか辿りつかないタクシーに
イライラしながら病院の玄関前で待つ時間。
ようやくタクシーが到着すると、三人で乗り込み、車は雪の中
警察署に向けて走り出した。
辿りついたのは夕方。
時雨は何かにとりつかれたかのように
先ほどとは違って、スタスタと歩いて建物の中に入っていく。
それは、弓矢が放たれる直前のような緊張感も漂っていて、
私を不安にさせた。
「遅くなりました。
お電話を頂きました、金城と申します」
受付で声をかけると、
中から一人の男の人が近づいてくる。
「遅かったじゃないか」
そう言いながら近づいてくる男性。