水晶の少年 ~SEASON~
2.連絡の取れない時間-妃彩-
氷雨と会えなかったクリスマスから三か月。
繋がっていた電話は何度鳴らしても
すぐに留守番電話。
氷雨から貰った携帯電話を見つめては、
溜息をつく日々。
携帯を操作して映し出すのは、
最後のメール。
デートをするはずのクリスマス。
お洒落して待ってたその時間、
氷雨から届いたのは一通のメール。
*
To:妃彩
悪い……。
メリークリスマス。
今日は行けなくなった。
また埋め合わせはする。
氷雨
*
その後、すぐに理由が知りたくて
氷雨の携帯にコールしたのに繋がったのは留守番電話。
ねぇ、氷雨?
今度は何時、連絡をくれるの?
私の事、嫌いになっちゃった?
だから氷雨は私の前から消えちゃったの?
そんな風に考えちゃいけないって思いながらも、
そういう生活が続いてきた私には、考え方をすぐに悪い方にばかり
想像が膨らんでいく。
ちゃんと切り替えないといけないって、
氷雨くんと出逢ってから、ずっと教えて貰ったのに、
癖づいた習慣は、こんな時にもいい方に機能してくれない。
コンコン。
ふいにノック音が聞こえる。
「はい」
車椅子のタイヤをゆっくりとまわして、
ドア側に方向を切り返す。
「どう?
彼から連絡来た?」
そうやって部屋に入ってくるのは和花(のどか)ちゃん。
私が暮らす、桜ノ宮サナトリウムを紹介してくれた朔良(さくら)さんの妹。
そして私の大切なお友達。
氷雨と連絡がとれなくなった直後、
熱が下がらなくなって学校を休んでしまった私。
そんな私を心配して、毎日書き写した授業のノートを届けてくれた
初めて出来た私の大切な大切なお友達。
和花ちゃんと出逢えたのも、氷雨くんのおかげ。