恋に一番近くて遠い君
ゆっくり立ち上がって陸玖の方へ歩き出す。



「陸玖…」



私は陸玖の前で止まった。
今度はちゃんと顔を上げて。


「美海……」



陸玖が手を伸ばしそっと私の頬に添えて親指で涙を拭ってくれた。


「ごめん、泣かせて」


「ううん、陸玖のせいじゃないよ」


泣くと困らせちゃうから泣き止みたいのに陸玖が目の前にいるってだけで涙が出てくる。


「俺さ美海の泣いてるとこ見るとどうしたらいいかわからなくなるんだよ」


薄暗くてよく顔が見えないけど陸玖の顔が少し歪んだように見えた。


「俺らさ、ずっと一緒にいたじゃん?俺にとってそれは当たり前なことだと思ってた。これから先もずっと美海が隣で笑っていてくれればいいなって思ってた」


私は静かに陸玖の言葉を聞いていた。


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