あいつの前に(仮)
「食券もらうよーっ!」
威勢のいい声でラーメン屋の兄ちゃんが彼らから食券を渡される。いつものね!と確認して大きくパフォーマンスをしながら作り出す。
「いつもありがとよ!」
彼らの前にドンっと湯気がもくもく出ている熱々のラーメン鉢を置いた。
「相変わらずうんめぇー兄ちゃん最高っ!」
グーっと親指を立てながら夢希はラーメンを頬張りながら喋った。そして続ける。
「壱君は?」
ごくんとラーメンをのどに流し水を飲む。
「まだ、あのスイートルームに住んでんの?」
彼は咲壱の横顔を見て口を閉ざしている姿を見て、察した。
「そっか。」
「うん……。」
ラーメンをすする音だけが二人の間で流れてた。
-それが壱君の幸せなら仕方ないけど、本当にそれでいいのかよ。仕事できんのに、プライベートもうまいことやれよ。
昼休みの休憩は終わった。