あいつの前に(仮)
「もしもし。」
「あ、俺。電話くれてたみたいだけど、どうかした?」
彼は彼女からの初めての連絡に動揺が隠せない。気持ちを整えながら話した。
「昨日、結愛(ユナ)ちゃんが来たでしょ?」
「名前覚えてないけど、麗子さんの後輩って子なら。」
「相変わらずね。」
彼女は電話のむこうで笑う。なかなか電話をした理由を話さない。
「彼女の話聞いた、麗子さんは俺にっ」
言いかけたと同時に彼女が言葉をかぶせてくる。
「私のこと諦めたいって思っちゃった?」
彼女の声が小刻みに震えているようにも聞こえる。自分が後輩を紹介したことを後悔していた。
彼はスマホを当てながら首を軽く横に振る。
「麗子さんに会いたい。」
彼は深くベッドに腰を落とし、頭を抱えながら伝えた。