もう一度あなたに恋をした。



なんだ…勘違いだったのか…


と、ホッとしたのも束の間。




そうなると、一番の疑問が残ることになる。




「じゃあ…ハンカチの”M”は誰?あのハンカチは、誰のなの?」



ドキドキしながら答えを待つ。


佐伯くんの目が泳ぐのを、あたしは見逃さなかった。





「…先輩には、まだ言えません。」





そう言った佐伯くんは、また”あの表情”で。



「正確に言うと…まだ言う時じゃないんです。」


言い聞かせるように、抱きしめたままのあたしの頭をポンポンと撫でる。


それから少し離れて、腑に落ちないあたしの目をしっかりと見て。




「”その時”が来たら…必ず言います。だから、もう少し待っててもらえますか?」



…ゆっくりと頷く。


真剣なその表情に、信じようと思えた。




もう、”M”が誰だっていい。なんて思えてきた。


だって今、佐伯くんの腕の中にいれる事が、何よりも幸せで…


< 112 / 116 >

この作品をシェア

pagetop