会社で恋しちゃダメですか?
小杉は言葉につまった。
「TSUBAKIにお願いすると、製品に大手の冠がつきますよ。「竹永コスメティック」ブランドが、消え失せます。「竹永」を消したいですか?」
リーダー一同が、うつむいた。
山科はリラックスさせるように「大丈夫」と口に出す。
「方法はいくらでもあります」
園子は思わず「あの……」と手を上げた。
「池山さん、なに?」
「一年でそれほどの流通を増やすとなると、生産体制が追いつかないと思うんですが。資料にも記載しましたが、長野の一工場で生産しているだけで、そこでこれ以上生産量を増やすのは難しいかと思います。なおかつ、竹永コスメティクは無添加をうたっていますので、消費期限が短いんです。なのでこれまで、ストックを増やさないよう、生産量を調節してきました」
「よし、じゃあ明日、生産部と話そう。池山さん、スケジューリングよろしく」
「はい」
「生産体制が追いつかないのであれば、最初に品薄にしてブランド価値を高めるのは、どうでしょうか」
山科は提案した。
「これまでの流通も制限するんですか?」
朋生が訊ねる。
「そう、手に入らないとなると、どうしても欲しくなる。それが心理ですから」
「これまで買ってくれていた人たちが、その期間に離れていったりしないでしょうか」
「この商品なら、大丈夫。呼び戻せます」
山科が言うと、なぜか、本当にそんな気がしてくる。
「その間に生産体制を整えましょう」
「はい」
皆が頷いた。