会社で恋しちゃダメですか?


しばらく集中して仕事をしていると、「園子」と声をかけられた。


顔をあげると朋生が園子を見ている。
「あ、おはよう。ごめん気づかなかった」園子は謝った。


「園子、うれしそう」
朋生がぽつりとそう言った。


タイピングしていた園子の手がとまる。朋生の考え込むような表情を、申し訳ないような気持ちで見た。


「紀子が言ってた。いいこと、あったんだって?」
朋生が訊ねる。もう全部をあきらめてしまった、そんな脱力感が感じられた。


「たぶん」
園子はうつむく。


「そっか……よかったな」
朋生が静かにそう言った。


「ごめんね」
「なんで謝るんだよ」
朋生が笑う。


「だって」
「いいんだ、それは……ただ」
朋生が言いよどむ。


「あおいが大切って言われたんだろ。それは大丈夫なのか?」


園子はそこで固まった。


そうだ。
フワフワしすぎて、すっかり忘れていたけれど。


ネット記事で見た、山科とあおいが並んでいる写真を思い出した。楽しそうに笑い合う二人。


園子の顔にとまどいが現れたのか、朋生の顔が厳しくなる。


「もし、園子を泣かせるようなことをしたら、部長シメるから、言ってくれよ」
そう言って、しかめ面をして見せた。


< 134 / 178 >

この作品をシェア

pagetop