会社で恋しちゃダメですか?
夕方、就業時間近く。
六月にそろそろ入ろうかという時期。陽が沈んでも、オフィスの中に暖かさが残る。
園子の頭の中は、いろんな情報でぐるぐるのめちゃめちゃで、仕事が思ったよりはかどらなかった。仕事でミスをしたら「君がすきなんだ」と言ってくれた山科を、がっかりさせてしまうかもしれない。
「今日も残業?」
紀子が帰り支度をしながら、園子に聞く。
「うん」
本当は、プロジェクトの仕事も一段落しているので、今日は早く帰れるのだけれど、目の前の仕事を明日に持ち越すのは自分自身が情けなかった。
「頑張るねー。愛の力か」
「違うってば、そんな」
園子は首を振った。
「じゃあ、お先に失礼するね。また明日」
紀子は明るい笑顔で、手を振った。
山科からは外出先から「直帰」の連絡が入っている。一時間、二時間とすぎると、オフィスの人もまばらになってきた。
「ああ、終わんない」
園子は机につっぷした。集中したくても、すぐに頭がどこかへ飛んで行ってしまう。
山科とあおいが並ぶ姿がちらついた。
そこに電話が鳴った。もう八時すぎなのに、誰だろう。
園子は電話をとった。
「はい、竹永コスメティックスでございます」