会社で恋しちゃダメですか?
「部長?」
暗闇に山科の姿がまぎれてしまうと、園子は不安になった。おそるおそる山科の部屋の方へと歩を進める。
「わっ」
山科が突然部屋から出て来た。
園子は驚きのあまり声がでない。目を開いて山科を凝視する。
「びっくりした?」
山科が言っても、園子の心臓が衝撃で止まってしまったようで、動くことができない。
「池山さん?」
山科が心配そうな声を出す。
「び、びっくりしました」
園子はやっとそう返事をした。
「ごめんごめん、そんなに驚くと思わなくて」
山科は笑いながら園子を優しく抱きしめる。
まだ慣れない、山科の腕の中。園子はどうしていいのか分からず、棒立ちになる。
「顔あげて」
山科が園子に言う。
「はい?」
園子は素直に顔を上げる。
山科が園子の顎を指で支えて、くいっと更に持ち上げた。あっという間に山科に唇を塞がれる。
園子は次々とおこる出来事に対処できずに、棒立ちのまま動けない。
すると山科が顔を放して、園子をみつめる。山科の輪郭が暗闇に溶けて見えた。
「池山さんは、子供のキスしか、したことないのかな」
園子の心臓が大きく跳ねた。