会社で恋しちゃダメですか?
「えっと」
園子は口ごもる。山科の言う通り、それほど経験があるわけじゃない。
「じゃあ、今から大人キス」
山科の顔が近づく。初めてキスされたときの、溺れるような柔らかさを思い出して、園子は思わず腰が引けた。
逃げようとする園子を、力強い腕が捉える。腰をひきつけられて、園子の身体が半ば宙に浮いた。
「待ってください」
「待てない」
「だって、そんな……」
「ぶつぶつ言わない」
「でもっ」
園子が最後の力で抵抗すると、山科は園子の腕を掴んで壁に押しやる。
あっというまに海に放り込まれた。
繰り返す波のようなキス。
唇を離す合間に漏れる声。
山科が拘束していた腕を放すと、園子は無意識に山科の首に腕を回した。
二人の身体が暗闇で溶け合うように重なる。
強いお酒をあおったような身体の火照り。
早まる鼓動。
全部の感覚が、唇に集中している。
山科が顔を離すと、園子はやっと普通に息ができた。
よろけて壁にもたれる。
暗闇の中で山科が楽しそうに微笑んでいるのが見えた。
「どう?」
「どうって……言われても」
山科は園子の身体を再び抱きしめた。