会社で恋しちゃダメですか?
「ろくでなしの放蕩息子であったならば、結婚相手に誰を連れて来てもかまわない。金だけやって、勝手に暮らせと言えるだろう。でも息子は……分かってますよね、お嬢さん」
社長が言う「彼は至極優秀だ。もしかしたら大企業のリーダーになれるほどの」
「女は、金持ちの男と結婚したがる。でも男の伴侶となったからには、遊んで暮らせるわけじゃない。大きな責任と重圧を男とともに背負うんだ」
園子は脚がおぼつかなくなる。
「四万人の人生を背負うことができないのなら、今すぐ達也から身を引いてほしい」
園子は手を握りしめる。社長は園子の様子をちらっと見た。
「達也は懲りてないようだ。自分で自分を追いつめている」
「……」
「お嬢さん、達也の結婚は、ビジネスと一緒だ。山科家に得があると思わなければ、許す訳にいかない」
冷徹な言葉。でもそれは、大きな企業を率いるリーダーだからこその、考えなのかもしれない。反論ができない。
「ただし」
社長が続ける。「得があると分かれば、反対できない」
園子は考える。それって。
「ビジネスだよ、お嬢さん。わたしが望むものを、君は差し出すことができるか。ヒロインじみた自己犠牲は望んでいない」
社長が笑う。「考えて、お嬢さん」