会社で恋しちゃダメですか?
園子はポケットから、マスクを取り出してかける。すぐに二人の後を追って、コーヒーショップへと入った。
ちょうどコーヒーも飲みたかったし。
それにビジネス上の関心も……ある。
園子は無意識にそんな風にごまかして、追いかける後ろめたさを払拭しようとする。
チェーンのコーヒーショップ。園子はコーヒーをオーダーして、一番奥に座っていた二人の席と背中合わせの椅子に座った。我ながら大胆で、ちゃっかりしている。
耳をすませると、二人の会話がちゃんと聞こえる。園子はじっと聞き耳を立てた。
「何もこんなところでコーヒーを飲まなくても、いつものところで飲めばいいじゃないか。うまいぞ」
「ここも、おいしいですよ」
「そうは思えんがな。で、どうだ、竹永は」
園子は「竹永」という言葉にはっとする。仕事の話をしてるんだ。
「みんな意欲的です。目標を達成できるよう、努力しています」
「努力だけじゃ、なんともならんことがある」
「わかってます」
「最終的には、うちのブランドの一つとして、売って行きたい商品だ。変に社員を煽るなよ。商品を得たからといって、その社員が欲しいわけじゃない」
「でも、優秀な社員はいます」
「本社に引き抜ける?」
「おそらく」
「まあ、それはお前に任せた」
園子は信じられない気持ちで、二人の会話を聞いていた。
「社員が欲しい訳じゃない」
胸をえぐられるような気持ちになる。
どういうこと?
山科部長は、TSUBAKIから来た人なの?