会社で恋しちゃダメですか?


社長が資料から目を上げ、山科の顔を鋭くみつめる。園子は息をのんだ。


「TSUBAKIの名前は出さないということだな」
「はい」
「それで、どれだけの売り上げを出せる?」
「資料の八ページ目をご覧下さい」


社長は再びじっくりと資料に目を通す。それから顔をあげて、ポンと机を軽く叩いた。


「ちょっとは使える案を持って来たようだな」
「今後もこの方式を使って、ブランドラインを別会社化していくということも、可能です」


社長が薄い笑みを浮かべる。「わかった。二年やる。お前が竹永で成功してみせろ」


「従業員の切り捨てや、TSUBAKIからの人材は必要ありません」
「好きにしろ。初年度で株価を安定させて、株主に還元できることを証明してくれ」
「わかりました」
「竹永社長には、わたしから、言っておく。おまえは営業部じゃなく、もっと会社全体を見渡せるポジションに変える」
「はい」


山科の顔にほっとしたような表情が広がる。園子も張りつめていた気持ちが、少しだけ緩んだ。


「それで? お嬢さんを連れているってことは、話はこれだけじゃないだろう?」
社長が資料を脇に寄せると、腕を組んだ。
園子をその鋭い目でみつめた。園子の脚がすくむ。


「この案は、彼女なしでは、提示できませんでした」
山科が言った。


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