会社で恋しちゃダメですか?
「そうか?」
朋生はなおも気になる素振りを見せるも、他の社員との会話へと戻って行った。
園子は朋生の横顔をぼんやりと見つめる。
朋生が園子を好きだなんて、そんなおかしなこと、信じられない。
自分は至極普通だし、口べただし、人見知りだし、緊張しいだし、欠点だらけだもん。
園子はごくごくとウーロン茶を飲む。のどが乾いて仕方がない。なんだかおかしいな。
「ねえ、園子。やっぱり山科部長って、突き抜けてかっこいいよね」
紀子が耳元に、ひそひそと話しかけて来た。
「そう?」
「そうよ、周りと比べてごらんって。まあ、朋生は悪くないけど、悪くないって程度。山科部長はダントツ。仕事もできるし優しいし、完璧だよね」
園子はその言葉に、どういう訳か涙腺を刺激された。
みんなだまされているのに、竹永の社員は疑うこともしない。
なんていい人たち。
そんな人たちを、いらないって言うなんて。
「ど、どうしたの?」
紀子が慌てたような声を出す。
「なんか、悲しくて」
言ってる側から、涙がぽろぽろ出始める。
「どうした? やっぱ園子おかしいな」
朋生が心配そうな目をして、こっちを見る。
紀子がいぶかしげな顔をする。それから園子のウーロン茶を横からとって、一口舐めてみた。
「これ、烏龍ハイだ」
朋生が「え!?」と驚いた声を出した。