会社で恋しちゃダメですか?


山科は瞳にうっすらと涙を浮かべ、ベッドから園子を見上げる。


思わず、園子の胸が、ドキンと鳴った。
なんだか……妙な色気が……。


顔が更に赤くなった。


「タクシーをよんで、いざ立ち上がらせようと思ったら、思いのほかダダをこねて」
「ダダをこねて? わたしが?」
「そう、きみが」
「そいで、お酒に手を伸ばそうとするから、みんなで止めたんだよ。でも制止がきかなくて、そのまま倒れこんじゃった。お酒を頭からかぶってね。でも……」


山科が再び笑い出す。
「池山さん、それでも笑ってんだ。めちゃくちゃおかしかった」


園子の頭に、無様に倒れる酔っぱらいの自分が見えた。
毛布を引っ張り上げて、顔を隠す。


もう、辞職するしかない。
そんな失態を見せただなんて。


涙がじわりとあふれてきた。どうせすぐにでもリストラされるところだったんだから。そう思っても、悲しみにうちひしがれた。


「泣いてる?」
頭の上から、山科の声が振ってきた。


「な、泣いてません」
「……泣くなよ。もう笑わないから」
「わたし……会社を辞めます」
「何いってんだ、これくらいで」
「でももう、みんなに会わせる顔がない」
「結構、うけてたよ?」
「うけてたって……。うれしくありません」


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